消費者行動研究に実証的なアプローチによって取り組む際とき、適切な質問項目(測定尺度)を用いることがひとつの山場になります。そのため、卒業論文や修士論文を執筆するプロセスで、調査や実験の質問項目の選定や表現などについて、指導教員から長い時間にわたって指導を受けることが少なくありません。また、この作業は論文執筆努力の一部であるとして、適切な尺度を「探してきて!」、「考えてきて」と突き放されることもあるかもしれません(笑)。
消費者調査や実験しようとする実務家のみなさんも、同じような苦労をされることがあると思います。質問項目を恣意的に作って良いのかと悩まれたこともあるかもしれません。
実は、消費者行動研究の尺度を一同に集めた尺度集があります。その書籍をみると、そのような苦労や悩みは、かなり軽減されるかもしれません。それらの書籍には「確立された」尺度が集められており、その中から目的に見合うものを選ぶことができるからです。
ここで、2冊紹介しておきます。
Gordon C. BrunerⅡ (2021).
Marketing Scales Handbook: Multi-Item Measures for Consumer Insight Research Volume Ⅹ. Texas USA: GCBII Productions, LLC.
Bearden, William. O., Netemeyer, Richard G., & Haws, Kelly L. (2011).
Handbook of Marketing Scales: Multi-item Measures for Marketing and Consumer Behavior Research. 3rd ed, California: Sage Publications.
私見で位置付けを述べると、前者は、最新の文献まで含めて網羅的で尺度が集めてあることに特徴があるようです。後者は、理論的な位置付けを明確にしつつ、精査された尺度を掲載しているようです。
また、ブランドに関係する尺度を集めた尺度集も出版されていますので、こちらもご紹介しておきます。
Zarantonello, Lia & Pauwels-Delassus, Véronique (2015).
The Handbook of Brand Management Scales. London: Routledge.
ぜひ、有効に活用して良い論文を執筆してください。また、実務家のみなさんは、ぜひ実り多い消費者調査を実施してください。
松下光司(中央大学ビジネススクール教授)